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酸素と活性酸素の矛盾

私たちは生きていくためには酸素が必要不可欠であるにもかかわらず、酸素を体内で利用してエネルギーを得るときに生産されてしまう活性酸素の害に悩まされるという矛盾を持って生きています。
こうした矛盾を抱えた背景には、生命が進化する過程が深く関わっています。


かつて酸素は猛毒

地球が誕生した時には、酸素はまだ地球上にほとんど存在していませんでした。
地球上に生命が誕生した当初には酸素がなかった訳ですから、その頃の生物は当然酸素を必要とはしません。
酸素が地球の大気に増えていったのは、光合成する生物が地球上に誕生したためです。
皆さんご存じのように、光合成は植物が二酸化炭素と水から光のエネルギーを利用して、自分のエネルギー源であるブドウ糖を作る手段なのですが、その過程で酸素が発生します。
光合成をする植物が増えたために、大気中に酸素も増えていった訳です。


しかし、その頃の生物にとって酸素は必要でないだけではなく、紫外線によって活性酸素に変化し、物質を酸化させる猛毒だったのです。
活性酸素によって生物の細胞は破壊され、死滅していきました。
それから何億年もの時が経て進化の過程で、この猛毒である酸素に対応できる生物が生き残っていきました。
つまり、酸素を利用してエネルギーを作ることができる生物が誕生したのです。
とは言うものの、酸素が体に害を与えるという事実には変わりありません。
酸素を利用してエネルギーを作るときに、利用する酸素の約2%の活性酸素が必ず発生してしまいます。
そこで、発生する活性酸素を除去する酵素を体内で合成して、身を守る術も獲得しました。


ではなぜこのような猛毒である酸素を、エネルギーを作るために利用するようになったのでしょうか?
実は酸素を利用すると非常に効率よくエネルギーを作ることができるからなのです。
それまで硫化水素を利用してエネルギーを生産していた生物に比べて何倍もの大きなエネルギーを楽に得ることができ、活発に動き回ることができるようになりました。
酸素による害以上のメリットがあったのです。


こうして、私たちは生きるために酸素が必要不可欠である一方、活性酸素の害から身を守らなければならないという矛盾が生じたのです。
こうのように、生物が酸素を利用する限り、活性酸素の体内での発生は不可避ですので、活性酸素による酸化の害をいかに抑えるかが大事なのです。